第17章 【優しい手】
とにかく早くこの場を去ろう。そう思ったクリスは「それでは」とお礼も満足に言わずにそそくさと出入り口に向かおうとした。
「待て」
「はっ!はいっ!!」
背後からスネイプに呼びめられ、クリスの心臓が飛び跳ねた。いったいどんな仕打ちが待ち受けているのだろうと身構えると、スネイプはクリスの頭をくしゃっと撫でた。
不意を突かれたスネイプの行動に、クリスはつい茫然としてしまった。
「何をしている?用が済んだらさっさと寮へ戻りたまえ」
「は、はい……失礼します」
いったい何が起こったのかよく分からないまま、クリスはフラフラとスネイプの研究室から出た。廊下を曲がると、待ち伏せしていたハリー、ロン、ハーマイオニーと出会った。3人はクリスに駆け寄った。
「良かった!クリス、元に戻ったんだね」
「心配したんだぜ?君ってばよりによってスネイプの所に行っちゃうんだもん」
「大丈夫だったの?何かされなかった?」
「うん……大丈夫」
ハリー達の心配をよそに、スネイプの研究室で甘えたい放題だったなんて口が裂けても言えない。特に、ご褒美に頭をなでて貰ったなんて――。
(でも……優しい手だったな)
ついつい思いだしてしまい、クリスはまた恥ずかしさで死にそうになった。
それから暫くの間、スネイプの前にでると、挙動不審な行動ばかりとってしまうクリスの姿がそこにあったのだった。