第17章 【優しい手】
とにかくクリスに出来ることは、お手本として完璧な薬の作り方をネビルに見せ、少しでもネビルの失敗を減らすことだ。そうと決まれば、クリスは慎重かつ丁寧に「縮み薬」の調合に取り掛かった。
沈黙が教室全体を包み、聞こえる音と言えば大鍋からぐつぐつと煮立つ薬の音だけだ。クリスが横目でチラリとネビルの様子を窺うと、緊張で手が震えているのが分かった。この様子では失敗するのは目に見えている。流石に毒を扱っているわけでは無いので死ぬことはないだろうが、1週間位医務室のお世話になるかもしれない。クリスは己の浅はかさにため息を漏らしてしまった。
それから1時間後、スネイプの指示で全員手を止めて、隣同士出来上がった薬を試す時が来た。クリスの大鍋には「縮み薬」と、その解毒剤が完璧な状態で出来上がっている。対してネビルの大鍋は、いったいどうしたらこんな色になるのだろうと聞きたくなるほど、まだら色の不思議な薬が出来上がっていた。
「クリス……ごめん、僕……僕のせいで……」
「気にするな。大丈夫、悪くて医務室送りになるだけだ」
覚悟を決め、クリスはネビルの作った薬を一気にあおった。その瞬間、ものすごい味と共に体全体が悲鳴を上げ、そのショックでクリスはその場で気を失って倒れた。
「クリス!」
「大丈夫!?」
「しっかりして!!」
ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人が咄嗟に駆け寄る。見る見るうちにクリスの体が縮み、小さな子供の姿になってしまった。気を失ったが、一応薬としては成功していたようだ。しかしテストとしては解毒剤を飲ませるまでが範囲だ。試しに気を失ったクリスの口にネビル作の解毒剤を含ませてみたが、何の効果もない。
「どけ、貴様らでは話にならん」
スネイプがハリー達を押しのけ、万が一のためにと作った解毒剤を無理やりクリスの口に注ぐ。が、これと言った変化は見られない。トレバーにさえ効いたスネイプ特製の解毒剤さえ効かないとなると、手の打ちようがない。スネイプは眉間に刻まれたしわをよりいっそう深くした。