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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第17章 【優しい手】


 地下牢にある『魔法薬学』の教室、今ここではピーンと張りつめた空気が流れていた。と、言うのも今はクリスマス休暇前の最後の授業として、これまでの授業について総まとめと言える実技テストが行われているのだ。課題は「縮み薬」とその解毒剤の調合。それは良いのだが、問題はテスト直前に放ったスネイプの一言だった。

「この試験の最後に、出来上がった薬を隣の生徒と交換して試飲してもらう。出来損ないの薬を作って死者を出さぬように……精々頑張るのだな」

 スネイプは固まるネビルを冷ややかな目で見ると、早速作業に取り掛からせた。そのネビルの隣にいたハーマイオニーは、自分の命もこれまでかと顔を真っ青にしていた。それを後ろの席から見ていたクリスは、何とかこのスネイプの底意地の悪い企みを阻止できないものかと、咄嗟に手を上げた。

「どうした?ミス・グレイン」
「先生、黒板の字が見えにくいので、前の席に移って良いですか?」

 ハーマイオニーが横でネビルの補佐をしようとすれば、たちまち阻止されるだろうが、クリスなら多少は大目に見て貰える。何と言ったって、スネイプは父の後輩であり、純血主義のスリザリンの寮監だ。まさか純血として名高いグレイン家の令嬢を、死の危険にさらすことはないだろうと踏んだクリスは、自己犠牲と言える賭けに出た。
 スネイプの目が、クリスを見下ろす。この暗くて、何を語ろうとしているのか読めないスネイプの目が、父を彷彿とさせて苦手だったが、あえて逸らさずじっと見据える。何秒くらいそうしていただろうか、沈黙にグッと耐えていると、スネイプは一瞬ふっと笑った。

「……良かろう。ただしロングボトムに対して一言でも声をかけてみたまえ。カンニングとみなして直ちにグリフィンドールから50点減点する」

 万事休す、流石にクリスの魂胆などお見通しと言うわけだ。つい顔を歪めるクリスだったが、前言撤回は出来ない。クリスが大鍋を持ってハーマイオニーと席を代わると、スネイプは早速作業に取り掛からせた。
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