第15章 【悪戯仕掛人】
(……不思議なものだな)
入学式の日、ホグワーツに選ばれた時は何かの間違いかと思ったが、今はここにいる事が当たり前に感じる。ついボーっと部屋を眺めていると、何をしに部屋に戻って来たのか忘れそうになってしまった。
慌てて宿題一式を持って談話室へと戻ってくると、皆が掲示板を見ている。クリスも人ごみをかき分け掲示板の前に立つと、そこには“ホグズミード行き”というお知らせが張ってあった。日にちは学期末最後の週末だ。それを見て、行きたい気持ちより、ハリーの事が心配になった。それにホグズミードはホグワーツ入学前に何度も行っているので物珍しくはない。
「あっ、クリス!掲示板見た?これでクリスマスの買い物が全部あそこで出来るわ!!」
ハーマイオニーが嬉しそうにしていたが、クリスは乾いた笑いしかできなかった。何しろ以前ドラコと一緒にホグズミードに行った事を思い出し、むかっ腹が立ってきた所為もあるし、今回もハリーを1人きりにさせると思うと、今回のホグズミードは行かない方が良い様な気がした。
1人がけのソファーに、ポツンと座っているハリーの後姿を見て、クリスは心を決めた。
「悪いがハーマイオニー、今回はパスさせて貰うよ」
「えっ、どうして?」
「正直ホグズミードには何回も行っているし、それに――」
そこで言葉を切ったクリスは、さりげなく視線をハリーに向けた。するとハーマオニーが複雑な顔をした。
「あー……分かったわ。その代りおみやげを沢山買ってくるわね」
「ありがとう」
クリスはその場から離れると、さりげなくハリーの傍に行って、宿題を一緒にやろうと声をかけた。するとハリーが一瞬嬉しそうな顔を見せた。それだけで、クリスはなんだか満足な気分がしてきた。やはり自分の選択に間違いなかったと、クリスは安心して週末を過ごせると思った。
ついにホグズミード行きの日がやって来た。雪が降りしきり、皆コートやマフラーに顔をうずめていた。クリスはハリーと一緒に、ロンとハーマイオニーがホグズミードに行くのを見送りに玄関ホールまでやって来ていた。人だかりの中、ハリーが最後の確認をした。
「クリス、君、本当に行かないのかい?」
「ああ、ルーピン先生にあげるマフラーがまだ完成していないからな」