第15章 【悪戯仕掛人】
「僕の事気遣ってくれなくても良いんだよ?」
「気遣ってなんてないさ、本当にマフラーをクリスマス前までに完成させたいだけだよ」
それは半分本音で、半分はハリーを気遣っての事だった。独り学校に残るのは、流石に寂しすぎるだろう。それにもしかしたら、ハリーと一緒にいたらまたルーピン先生がお茶に誘ってくれるかもしれないという邪まな心もあった。
「それじゃあ、おみやげを期待しているよ」
「僕も、変なもの買って来ないでね」
「分かってるわ。それじゃあ行ってくるわね」
そう言って、ロンとハーマイオニーはホグズミード行きの“馬なし馬車”に乗って行った。それを見届けた後、2人は何も言わずグリフィンドール寮へ帰ろうとした。その時、廊下の柱の影から、声が聞こえてきた。
「ハリー、クリス、こっちこっち」
密かに声のする方へ顔を向けると、そこには双子のフレッドとジョージが隠れていた。本当なら今頃ホグズミード行きの馬車に乗っているはずなのに、どうして城内にいるのだろう。疑問に答える隙も無く、フレットとジョージはハリーとクリスのローブを掴むと、空き教室に連れ込んだ。
「何をするつもり?」
半分怯えたハリーが訊ねた。すると、フレッドとジョージが顔を見合わせてニヤッと笑った。こう言う時、2人は大抵良からぬ事を考えているのだ。
「君にも我らの師匠とも呼べる方々の恩恵を授けようと思ってね」
「師匠の恩恵?2人に師匠なんていたの?」
「確かに僕らは天才だ。独創的で、それでいて実力派でもある」
「だがしかし、俺らの上を行く諸先輩方がいましてね」
「なんだか胡散臭いな」
フレッドとジョージの悪知恵なんて、碌でもないものに決まっている。そんな彼らが師匠と呼ぶくらいだから、さらに怪しいことこの上ない。クリスが顔をしかめると、フレッドが得意げな顔をしてチッチッチと指を振った。
「これは正真正銘、超が付くほどのお宝だぜ」
「ハッキリ言ってこれを譲るのは惜しいが、2人がこれを秘密にしておけるって言うのなら、譲らない事も無い」
「一足早いクリスマスプレゼントだ」
そう言いながら、ジョージがローブから折りたたまれた古い羊皮紙を取り出した。こんな紙きれのどこが超が付くほどのお宝なんだろう。ハリーも訝し気な目で羊皮紙を見つめていると、ジョージが大げさにコホンと咳払いをした。