第15章 【悪戯仕掛人】
クリスマス休暇が始まる2週間前、授業が終わりクリスが談話室の暖炉の前のソファーでマフラーを編みながらくつろいでいると、泥んこになったハリーが談話室に入って来た。その姿はまるでシャワーを浴びたかのようにずぶ濡れだったが、顔は生気に満ちていた。
「随分練習が上手くいったみたいだな、ハリー」
「うん!これでちゃんとした箒があればいいんだけど……」
「だから言ったじゃないか、私の箒を使って良いって」
「でも、お父さんから贈られた大切な物なんだろう?」
「気にするな、一度ドラコと一緒に乗って壊したこともあるから。それに箒も飾りとしてよりちゃんとした乗り手に乗ってもらう方が喜ぶよ」
「うーん……じゃあ次の試合までにちゃんとした箒が無ければ貸してもらうよ。正直言って、学校の箒は古くて言う事を聞かないやつばっかりなんだ」
「ああ、任せおいてくれ」
その時、ハーマイオニーが沢山の教科書と羊皮紙を抱えて大広間に入って来た。カバンははち切れんばかりに膨らみ、手は細かいインクが所々に付いてた。その後ろから、ロンが本を何冊も抱えて疲れ切った様子で入って来た。
「参ったよ。ハーマイオニーに宿題を教えて貰ったのは良いけど、荷物持ちさせられるんだもん」
「あら、レポートを直してあげたんだからそれ位の労働はしてくれて当然でしょ」
「2人とも、宿題は終わったのか?」
「まだよ。図書室は寒いから、談話室に戻ってきたの。ロン、その本テーブルに置いてくれる?」
ロンはどさっとテーブルの上に本を置くと、3人掛けのソファーに身を投げた。ロンにとっては、肉体労働よりも精神的労働の方が疲れるようだ。
「そうだ、僕も宿題やらなきゃ」
「私も、そろそろ止めて宿題に取り掛からなければな」
ハリーは濡れたユニフォームのまま男子寮への階段を上って行った。クリスもきりが良い所でマフラーを編む手を止めて、女子寮まで宿題を取りに言った。
クリス達の部屋は螺旋階段を上った最上階近くにあり、出入り口の扉には真鍮のプレートがかかっている。そして円筒形の部屋は中心に暖炉があり、天蓋付きのベッドが4つ、壁にそって並んでいる。この部屋に住んで3年目になるが、年を重ねるごとにこの部屋にも愛着が湧いてきた。