第14章 【Shit】
確かにそうかもしれない。しかし頭で分かっていても心がついて行かないのが心情というものだ。クリスは大広間に着くと、ドカッと席に座り、先程の『闇の魔術に対する防衛術』の復習をしながら、甘い紅茶を飲んで気分を静めた。
そしてポテトを口に運んでいるとき、やっとハリーが遅れて大広間に現れた。久々に明るい顔をしている。
「何の様だったの?ハリー」
「僕がハッフルパフとの試合中に落っこちて、箒が壊れてしまった話をして、それからアズカバンとブラックの話を少しして……それから来学期にディメンターをやっつける方法をルーピン先生が教えて下さるって言ってくれて――」
「なんだって!!!??」
クリスが勢いよく立ち上がった所為で、スープがこぼれてローブを汚した。しかしそんな事は気にならなかった。ハリーはルーピン先生と2人きりでお茶を飲んだだけでなく、今度は2人きりで対ディメンターの特訓をするというのだ。ハッキリ言って、羨ましすぎる事この上ない。
「ハリー、そのディメンターをやっつける方法を教えてもらうの、私も参加させて貰えないか!!私も習いたい!!」
「クリス、貴女の気持ちは分かるけど、これはハリーにとって死活問題なのよ。また試合中にディメンターがやって来てハリーを落っことす事があったら、命の保証はないのよ?」
「でもっ!……ズルい。ズル過ぎる……」
てっきりいつもの様に癇癪を起すと思った3人だったが、クリスは俯いて目にいっぱい涙をためた。赤い瞳が、涙で宝石のようにキラキラと輝いている。クリスはローブの袖で涙をぬぐうと、何も言わずトボトボと大広間を出ていってしまった。その後姿を見て、ハリーはちょっとした罪悪感が胸を占めた。
「僕、やめた方が良いのかな?」
「そんな事ないわ!ハリーは少しでも自分の身を守る術を学ぶべきだわ」
「そうだぜハリー。それにクリスの事だ、すぐに忘れていつも通りに戻るよ」
「……私、ちょっと行って様子を見て来るわ。それにマフラーの編み方を教えるって約束したし」