第14章 【Shit】
そう言いって、ハーマイオニーはクリスを追って大広間を後にした。取り残された男2人はどうして良いか分からず、黙って昼食をとることにした。
ハーマイオニーは、クリスを追いかけて談話室へと急いだ。しかしそこにクリスの姿はなく、ハーマイオニーは寝室へ行ってみた。するとクリスのベッドのカーテンが閉まっており、ハーマイオニーはなるべく優しく声をかけた。
「クリス、大丈夫?」
返事は無かったが、ハーマイオニーはそっとカーテンを開けてみた。するとクリスは靴も脱がず、そのままの姿でベッドに伏せっていた。時々、鼻をすする様な声が聞こえてくる。
ロンとハリーは茶化していたが、クリスは本気でルーピン先生の事が好きなのだ。ハーマイオニー自身も去年、ロックハートに熱を上げていたので、気持ちは分かる。
ハーマイオニーはベッドの脇に座ると、優しくクリスの髪をなでた。
「大丈夫よ、クリス。貴女はとっても魅力的な人だもの。きっとルーピン先生にも気持ちが伝わるわ」
「でも……ルーピン先生は、ハリーばっかり贔屓している」
「ハリーはほら……特別だから。ブラックが狙っている事や、ホグズミードに行けないことを知っていて同情しているのかもしれないわ」
そう言うと、クリスはゆっくりと起き上がり涙をぬぐった。その顔はまだ納得していない様子だったが、塞ぎ込んでいるよりずっと良い。
「ほら、ルーピン先生にマフラーを編んであげるんでしょう。やり方を教えてあげるわ」
ハーマイオニーは赤い毛糸を1つ取り出すと、それをクリスの親指と人差し指にかけた。そして2本の編み棒で、一つ一つ網目の作り方を教えていった。単純な作業だったが、今はそれが幸いして、余計なことを考えず、作業に没頭していくことが出来た。
初めはハーマイオニーに1から編み方を教えて貰わないと先に進めなかったが、編んでいる内にクリスもだんだん編み方を覚えてきたのか、クリスはハーマイオニーが手ほどきしなくても編めるようになっていった。