第12章 【ハロウィーンの恐怖】
「クリス、どうしたの?」
「どうもこうも、ドラコの所為で人生最悪のホグズミードを過ごしたよ」
「え!?マルフォイと一緒だったの?」
「ハーマイオニーの命令だったんでな。でも途中で分かれた。ハリーは?何をして時間を潰していたんだ?」
その質問に、ハリーは「あー」だの「うー」だの言ってごまかそうとしていたが、遂に諦めた様に重い口を開いた。
「実は、ルーピン先生がお茶を入れてくれて……」
「なにぃ!!!?」
クリスは勢い余って立ち上がり、震える手でハリーの肩を掴んだ。てっきりホグズミードに行けず、1人孤独に過ごしていると思っていたのに、そんな美味しい展開が待っていたなんて。クリスは前のめりになってハリーに迫った。
「そっ、それで!?先生と何を話していたんだ?」
「うーんと……グリンデローの水槽を見せてもらって、そらからボガートを倒した時の話をして、そうしたらスネイプが薬をもって部屋に入って来た」
「スネイプが!?」
ロンは、スネイプがわざわざ他人の為に薬をもって来たことに驚いていたが、クリスは「ルーピン先生とお茶……」「ルーピン先生とお茶……」とうわ言の様に呟いていた。
もしも自分もホグズミードに行かず、ハリーと一緒にいたら人生最高の時を過ごしたのに。そう思うと、余計にドラコに対して怒りがつのってきた。
「スネイプがわざわざ他人の為に薬をもってくるなんて……ハリー、それに毒っぽいものは混じってなかった?」
「うーん、凄く苦そうだったけど、ルーピン先生はこの薬が飲めてラッキーだって言ってた。」
ハリーの話しを聞いて、クリスはハッとした様に顔を上げた。スネイプの薬を飲めてラッキーと言う事は、逆を言うとスネイプの薬が無ければ辛い状態と言う事だ。もしかすると――。
「先生、まさか難病にかかっていいるんじゃ……だからあんなに痩せてしまって……」
佳人薄命、ではないが、先生程の善人ならば何かしら不幸な運命を背負っていてもおかしくない。そんなルーピン先生の事を思うと、まるで胸に石ころが詰まったように苦しくなった。重度の妄想に眉をひそめるクリスの背中を、ハーマイオニーが強く叩いた。
「ほら、そんな顔してないで!もうすぐ大広間でハロウィーン・パーティよ!!」