第12章 【ハロウィーンの恐怖】
ハーマイオニーとロンと合流しても、クリスの心は晴れてはくれなかった。むしろ時間が経つにつれ、ドラコへの怒りが増してきて、どうしてあの青白い細い頬にビンタを喰らわせてやらなかったのか後悔してきた。
やがて外は夕暮れになり、雲がオレンジ色に染まると、生徒達はそろそろホグワーツに帰る時間が迫ってきた。ロン、ハーマイオニー、クリスの3人は、ハニーデュークスでハリーへのおみやげを山ほど買うと、暗くなる前にホグズミードを出た。
今頃ハリーは何をしているんだろう。せめてもの慰めは、今夜のご馳走だけだ。それでも、ドラコと最悪な時間を過ごした自分よりもマシだと思えた。
クリスはムスッと黙ったまま、城行の“馬なし馬車”に乗った。道中、クリスは一言も喋らなかった。ロンはいったい何があったのか聞きたそうにしていたが、ハーマイオニーが睨みをきかせていたので、遂に理由を聞くことなくホグワーツ城へ到着した。
3人は急いで玄関ホールを横切り、駆け足でグリフィンドールの談話室に行くと、そこにハリーの姿を見つけた。思っていたより落ち込んでいない様子を見て、3人は一安心した。
「ほらみて、ハリー!買えるだけ買ってきたんだ!!」
ロンがハニーデュークスで買ってきたお菓子を、バサッと袋ごと逆さまにしてハリーの頭の上にぶちまけた。たちまちハリーの周りにお菓子が散乱する。その量に、流石のハリーも驚きを隠せず、目をパチクリさせた。
「す、凄い数だね」
「そりゃ、僕たちだけホグズミードを楽しむわけにはいかないからね」
「何が気に入るか分からなくて、ひと通り買ってきたの」
「ありがとう。ホグズミードはどうだった?」
あまり心配を掛けさせまいとしているのか、ハリーはつとめて明るく質問した。
「僕とハーマイオニーは、ホグズミードの店中を回ったけど。クリスは……」
傍から見てもわかるクリスの怒りを前に、ロンはもごもご尻すぼみに言葉を切った。ハリーの斜め前のイスにどっかりと座ったクリスは、まだドラコへの怒りが冷めやらず、フンッと鼻息荒く返事をした。その様子を見て、ハリーが恐る恐る尋ねた。