第11章 【甘い罠】
「お願いだかからドラコ、おじ様に手紙で、傷の方はもうなんともないと伝えてくれ。じゃないと本当にハグリッドが教師を辞めさせられてしまう」
「そうだな、今日の君の態度で決めようかな。今日一日、僕の気が済むまで付き合ってくれたら父上に手紙を出しても良いよ」
「よし、約束だ!」
どちらにしても、ハーマイオニーの指令もあるので簡単なことだった。ただ単純に、ドラコと、一緒に、いつも通り、普通に過ごすだけだ。こんな簡単なことでハグリッドのクビがつながるなら容易いものだ。クリスはケーキを食べ終えると、ミルクティーをじっくり堪能し――これも絶品だった――ドラコと一緒に店を出た。
外に出ると、店内が熱気にあふれていた所為か少し肌寒く感じた。クリスがローブの前をしっかりと留めると、それに気づいたドラコがクリスの手を握って自分のローブのポケットに入れた。
「この方が温かいだろう?」
「気・安・く・触・る・な!」
そう言いながら、クリスは空いている方の手でドラコの頬を引っ張った。柔らかいドラコの頬が横にぐにっと伸び、いつものすまし顔が歪むを見て、思わずクリスは笑ってしまった。
「あはははは、ドラコ、お前少しはそうやって顔の体操をした方が良いぞ」
「それは君だって同じじゃないか?」
ドラコは空いた方の手で、同じようにクリスの頬を引っ張った。むにっとつかまれる感触に、クリスは眉根を寄せたが、それが余計に面白かったのか、ドラコは頬を引っ張られながらもニヤッと笑ったのが分かった。
お互いどこまで頬が伸びるかを確かめていると、傍から見られ笑われてるのに気づいて、恥ずかしくなってクリスは手を離した。少し赤くなった頬に手を当てると、同時にドラコも手を離した。
「何だかすっごい馬鹿みたいだな」
「ああ、同感だ」
ドラコも頬をさすりながら、いつものすまし顔に戻った。
それから2人、どこへ行くあてもなくぶらぶら町を散策していると、クリスが一軒の店に気づいた。そこは小さな看板に『マジカルストーン』と書かれいて、店内には数人のホグワーツ生がいた。
試しに入ってみると、そこには細かく仕分けされた天然石やパワーストーン、そして宝石や装飾品などが並べられていた。