第11章 【甘い罠】
そもそも、喧嘩するのは今に始まった事ではないが、何というか、こう……陰湿というか厄介というか、すぐに仲直りできない喧嘩が増えた気がする。
しかし、ふと隣にいるドラコの顔を見ると、いつもの気取った顔とは違い、凄く楽しそうだ。特にご機嫌取りなんてしていないのに――これがハーマイオニーの言っていた「普段通りで良い」と言う事なのだろうか。
「どうした、何を考えているんだい?」
「!?私が考え事をしているって良く分かったな」
「分かるさ、いったい何年の付き合いだと思ってる?13年だぞ、13年!」
「つまり私は13年も時間を無駄にしてきたと言う事か」
「それは一体どういう意味だい?」
「そう言う意味だろう?」
そう言って、クリスお得意のニヤッとした笑みを浮かべると、ドラコは怒ってそっぽを向いた。しかし本当は怒っていない事を、クリスは見抜いている。懐かしいこの距離感に、なんだか頬が緩んでくる。
「ところで今日はどうするんだ?」
「……そうだな、ハニーデュークスには絶対寄りたいし、久しぶりに『三本の箒』でバタービールも飲みたい。それに叫びの館もきになるけど――実はとっておきの店を見つけたんだ」
「とっておきの店?」
「ああ、きっと君も気にいると思う。最近できたばかりらしい」
「よし!じゃあまずはそこに行こう!!」
「待った、それよりもまずは叫びの館に行ってみよう」
「でもあそこは立ち入り禁止になっているっておじ様が――」
「だから行くのさ」
そう言って、ドラコはニヤリと笑った。それを見て、クリスも同じ表情を浮かべた。
2人は早速叫びの館への道を歩いて行った。道中、やはり叫びの館を外からでも一目見ようとするホグワーツ生徒の数人とすれ違った。
問題は、どうやって人の目を欺いて館の中に入るかだ。こんなことならゾンコの店でクソ爆弾を買って皆の意識をそっちに向かせておけばよかったと後悔したが、もう遅い。仕方なく、2人は強行突破に出る事にした。
「本当に呪われているらしいから、まともな生徒はもちろんゴーストでさえ近寄りたがらないらしい……クリス、心の準備は良いかい?」
「その言葉、そのままそっくり返してやるよ」