第46章 君としたい事ーR18ー(兼続)
「貴女は本当にどうしょうもないですね。
ほんの少し眼を離した隙に、敵に攫われ、
挙げ句の果てに乱暴されようとした」
さっき助けてくれた時、
「大丈夫か?
怪我は?心細かっただろう。
ああ、震えている。だが、もう大丈夫」
そう言って優しく労わるような声音で安心させてくれた同じ人物とは思えない程、
辛辣な言葉に冷え冷えとした眼差し。
華月は怯えるように兼続を見上げる。
「……まぁ…取り敢えず……
湯にでも浸かって手垢を落とし、少し気を休めるがいい」
フッと緩められた冷酷な兼続の眼差しに華月はホッと安堵した。
「はい」
「上がったら俺の処に来い。良いな」
「…はい…」
ホッとしたのは一瞬だけ。
再び、刺し貫かれそうな瞳を向けられ、華月はビクッと肩を揺らした。
「兼続さん…上がりました…」
「入れ」
短く承諾の言葉が返ってきた。
華月は恐る恐る部屋に入る。
「綺麗になったか?」
「はい…」
兼続の静かな声音には、怒り諦め、落胆などの感情は混ざっていなかった。
澄んで鈴のような冷厳な声音。
(いつも通り…良かった)