第45章 君と春の日ーR15ー(家康)
卯月の終わり頃、
朝
「……華月、ちょっと良い?」
何となく言いにくそうに家康が華月を呼び止めた。
「おはよう、家康。
うん、大丈夫だよ?」
「あのさ……」
交差する形で華月の耳元に家康の顔が近づけられる。
(ち…近い〜…)
何でもない事なのに、華月は緊張で真っ赤になってしまった。
午後、華月は針子の仕事に暇を貰い、門の外に立っていた。
「着物…着替えちゃった…」
若緑に撫子柄の小袖、紅桃色の帯を合わせていた。
(変じゃないかな…)
若緑に撫子柄の小袖、紅桃色の帯を合わせた。
待っている華月が見えた。
(華月、着物、着替えたんだ……俺の為に……)
自分の為にしてくれたのだと思うと、頬が緩んでしまいそうになる。
ソレを正して、平静を装って華月のそばへと歩んだ。
「華月」
「家康」
「行こうか」
「うん」
家康は華月の手をとった。