第44章 初雪の夜ーR18ー(秀吉)
「ぁ…」
華月が小さな声を溢した。
静まり返った御殿の夜。
が、突然騒々しくなった。
「秀吉さんっ!雪です初雪‼︎
雪降って来ましたよっ」
子供みたいに雪 を連呼して部屋に飛び込んできた華月。
「毎年毎年、よくもまぁ…」
飽きないのかと呆れる。
開け放たれた障子の向こうを見ると、
薄らと白いものが落ちて来ている様だった。
「本当だな」
秀吉が柔らかな声音でそう言った。
文机で頬杖をついて、困った童を見守るような顔で笑っている。
優しい眼差し。
愛おしそうな眼差し。
寒い夜も心を暖めてくれるような華月の事を愛している。
そう思わざる得ない瞬間。
「寒いだろ、こっち来いよ」
「秀吉さん知ってる?雪の日はそんなに寒くないんだよ」
「そうなのか?」
「湿度があって、上空の温度が低いと少々温かくても雪はふるんだよ」
理屈は知らない、原理も知らない。
だが、経験から雪の降る日ふそれほど寒くないのは知っていた秀吉だったが、華月がとても誇らし気に話すので、黙って聴いていた。
「…そっか、華月は案外物知りだったんだな」
「むぅんーっ、案外ってなんですか、案外って」