第38章 その手をいつまでもーR18ー(幸村)
「華月ちゃんのこと、今度は絶対離さない。
傍にいて、僕が幸せにするから」
痣のある私の右手を取って
隣りの家の仲良しユキくんにそう言われたのはまだ、5歳の時だった。
「華月〜。学校行こうぜ」
中学生になっても部活の朝練がない日は幸くんと一緒に登校した。
「幸〜っ!遅刻しちゃうよ!はやく‼︎」
高校は近いけど別の高校になった。
けど、用事がない日はやっぱり朝 一緒に行く。
駅まで一緒。
言葉通りユキくんは大きくなって、
「幸」「華月」と呼ぶようになっても
私の隣にいつもいた。
幼稚園のユキくんがなんで「今度は」と言ったのか。
何度も聞いた。
「前、会ってるんだ」
「前って?」
「ずーーーっと、ずっぅーーっと前」
答えはいつも同じだった。
いつ何処で会ったのか、
どれくらい前なのか、
分からないらしい。
でも、間違いないらしい。
(幼稚園の時の事なんて、覚えてないよね)
そう思っていた。