第36章 死に損ないの嫁ぎ先ー後ー(元就)
手放さないといけないと思っていた。
それが、華月の父とした口約束だったから。
(でも、もう…)
手放す必死はない。
なら、
「出て行くなんて許さねぇ」
華月を抱きしめて振り絞るように言った。
「………」
華月は元就の着物をギュゥゥと握りしめた。
華月の顎が自分の肩に押し当てられるのを感じた元就。
背中に回した手をソロリと上げ、頭を撫でた。
華月の軀が震えているのを感じた元就。
「華月…どうした…⁉︎」
軀を離して、顔を見れば
「なっ、おっ、お前、な、何で、そんなに泣いてるんだっ⁉︎
俺、何か、悪い事いったか⁉︎」
さっき迄の緊張感は何処へやら、
慌てふためく元就。
「なんだよ〜。洪水じゃねぇか…
…雨どいから溢れてるみてぇだぞ」
情緒もへったくれもない言いようで、
華月の涙を拭う。