第36章 死に損ないの嫁ぎ先ー後ー(元就)
「違いますよ!
命の恩人ではあるけれど、だからって事じゃないっ」
「じゃぁ……俺に抱かれたかっただけか」
クククと嘲笑気味に喉を鳴らし、眼を細め、華月を見る。
華月は唇を噛んだ。
(そんな事を言ってるんじゃないのにっ)
そんな華月に元就の手が伸びる。
「今から、俺に抱かれろ」
パシッ
伸びて来た手を華月が叩(はた)いた。
「な…」
今度は元就が言葉を失う番だった。
「今の元就様には触られたくありません」
はっきりと言われた。
「な…」
元就、2度目の言失。
「私の気持ち、解らないなら、触らないで」
「おっ、俺はっ!お前じゃないから、
お前の気持ちなんて解るわけないだろっ!」
華月の冷静な態度に元就はカッとなって声を荒げる。
「私、言いました。
元就様だったから、抱かれたって。
それでも解らないんですか⁉︎」
「ああ、わかんねーなっ」
華月の売り言葉を喧嘩腰で投げやりな言い草で元就は薙ぎ払った。
なのに、
「馬鹿!鈍感!横暴!」
「華月!おっまえっ」
更に華月に罵倒されて元就はどんどん頭に血が昇りそうだった。
けれど、怒りに暴言を続けようとした元就を華月が遮った。
「でもっ!
だけど、それでも…お慕いしています…と言ってるんです…」
華月が急に冷静で少し照れたように言ったので、元就は昇っていた血が一気に引いた。