第35章 死に損ないの嫁ぎ先ー前ー(元就)
戦いに敗れた……。
ウチの家は滅亡を辿るんだ…。
父上は私を家から出すと言う。
『一緒に死のう』と言うと思ってた。
でも、父上は
『家は途絶える。
お前はこの血を絶やすことなく繋ぐ為、嫁ぐのだ』
その言葉を聞いた時何故だか思った、
私は愛されてはいなかったんだと…。
ザブザブと海の中に入ってゆく女。
(死ぬ気だな)
後ろ姿の着物は安物ではないのが判る。
「………」
(あの先は一気に深くなるぞ)
と思っているとフッと女の姿が消えた。
一瞬のことだった。
棚が急に終わると、そこに寄せる波は急に速さを増す。
攫われれば一貫の終わりだ。
(俺には関係ねぇ…)
と思ったが、
見てしまったからこのままも後味が悪い。
(しゃーねぇなっ)
手際良く着物を脱ぎ捨てると縄を腰に縛り飛んだ。
シュッ‼︎
「頭っ!」
船の上から声が追って聞こえた。