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≪イケメン戦国≫ 君と詠う愛の歌 SS

第30章 春待ちて氷柱落つー前ー(秀吉)




私はただの人だ。
男か女と問われれば、女だ。

小さな村で貧しく育った。
兄様みたいな、馴染みがいたけれど、
いつの日か、
「俺はもっと偉くなる。そして、天下を取る」
「天下を取ったら、どうなるの?」
「戦もなくて、喰う物にも困らない世の中を作る」
キラキラととても良い顔をして、夢を語って言って村を出て行った。

もう何年も前の話。

何度も何度も戦があって、田畑は踏み荒され、男達も駆り出され、
1人、また1人、と、減っていった。


「藤吉にぃ……?」
私の前に立っていたのは驚くほど上等の衣を纏った藤吉郎兄だった。
ボロボロの姿でいなくなった人とは思えないほど立派で、一瞬、言葉を失った。
強い眼差し、ここに居た時は全て投げやりな荒れた眼だった。
久しぶりに見た藤吉郎兄はまるで
知らない人みたいだった。
でも、面影だけはあって、間違いなく藤吉郎兄だと思った。

「お前……まだ、此処に……」
「行く場所なんて、…他にない…」





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