第29章 目醒めなくなるまでの幸せは(光秀)
「泣くな…」
「嬉しくても、涙は、出るんですっ…ぅぅ」
泣きながら笑う華月を見れば
「泣くな。もっと、虐めて泣かせたくなるぞ」
構いたくなる。
「えっ⁉︎」
俺の言葉に驚いて華月が止まる。
(朝、最初にお前の顔を見て、最後にもお前の顔を見れる)
「冗談だ。
だが、1日の最初と最後をオマエと過ごせるのは、悪くない」
そう言ってやると、華月は先程よりさらに顔を赤くした。
(本当は、悪くないどころか、幸せだ…)
少し話をしただけなのに、疲れた気がする。
「…華月…俺が眠るまで、傍に居ろ……」
「はい、ずっと、傍にいます。安心して寝て下さい」
華月の笑顔が行灯に輝いて揺れる。
「…あぁ…」
(朝陽に輝くオマエの笑顔を見て、明日もまた新しい日を始めたいものだ……)
そう願いながら、俺はゆっくりと眠りに落ちていった。
ー了ー