第16章 愛を冷遇する者 R18ー後ー
「最初から最後なんてありませんでしたよ。
今から始まりですからね。
側にいます」
間近に見えるのは、優しく慈愛の笑顔だった。
「華月っ」
抱きしめる腕に力を込めた。
「信玄様の所にはーー……今は、行きません」
(今は?)
「でも……謙信様が私を見てくれなかったら、次は本当に行ってしまいますからねっ」
何処まで本気かわからないが、華月は意地悪を言った。
「分かった。肝に据えておく」
堂の先の扉を開けば、
眩しい外の光が待っている。
私達はようやく闇を脱して、
光の中を歩き始めるんだ。
過去からの解脱……。
貴方と手を繋いで、微笑み合いながら歩くのも、もう難しくない。
過去は過去として、思い出として。
愛してる。
ー了ー