第16章 愛を冷遇する者 R18ー後ー
何も知らない他人が
『もういいじゃないか』と言った処で、
本人が『もういい、赦す』と言わねば、
罪を許された事にはならない。
(お前が 赦す、と言わねば、俺は許されたと思えぬのだ……)
もう口もない、骸もない、
そんな死人(しびと)にどうやって答えろと言うのか。
吉祥天も仏像で喋らない。
(ほらみろ、一生、赦されることはないのだ)
薄い嘲笑が浮かぶ。
可笑しくて、息笑を溢し視線を伏せた。
目を伏せた俺とは反対に、顔を上げた華月が、俺を見ているのを感じた。
「謙信様ーー……」
華月が揉握(じゅうあく)するような声を耳に吹き込んで来た。
※揉握…手に握り柔らかくする。