第15章 愛を冷遇する者ー中ー
幼い恋を引き摺って、
傷ついて、大人になった。
姿だけ大人になった。
澄んだ心を歪め軋ませて、
過去に縛られたまま、
心を氷のように凍らせて大人になってしまった。
1度は、それを寛容し、理解し受け入れ、
私が寄り添っていこうと心に決めたけれど、
寄り添っても、ずっと…
…ずっと、凍ったままの心。
氷ならば、溶かせばいい、
温めてあげればいい、
そう思って来たけれど…駄目だった。
ならば、叩いて割るしかない。
無理矢理にでも。
(そして、私を見てもらうんだ)
謙信様の為、いや、違う、
私の為だ。
私は、『私を愛している』と言う謙信様に、ちゃんと目の前にいる華月と言う私を見てもらいたい。
そんな利己的な思いを、卑怯にも
謙信様の為、謙信様を過去から解放してある、
と言う最もらしい、大義名分にするのだ。