▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第2章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *共通ルート*
―――遡ること、数刻前。
「信長様、ハナです」
朝餉に出向くより早く、信長に呼び出されたハナは、天主にある信長の部屋の前で声をかけた。
「ハナか、入れ」
信長の許しを聞き、ハナはそっと襖を開いた。
中へ入ると、信長は大量の書状を積み上げた文机に片杖をつき、小さな化粧箱をもう片手で弄んでいた。
その表情には、とびきりの悪戯を思いついた子供のような楽し気な笑みが浮かんでいた。
「御用でしょうか、信長様?なんだか今朝は、特に楽しそうですけど……」
しかし信長は、ハナの顔を見るなり、形の良い眉を怪訝に顰める。
「……貴様こそ今朝はどうした?その顔色……さては、あまり寝ておらぬな?」
「…え!?えーとその…」
オロオロと狼狽えるハナを、信長はじっと見据える。
その視線に負け、ぽつりと白状する。
「はい……昨日は、急ぎ仕上げたい仕事があって……あ、でもいつもはちゃんと寝てはいますから!」
そういって、ほにゃりといつもの笑みを浮かべるハナを、信長は呆れたように見つめた後、ふっとどこか優し気に笑った。
「貴様の働きは認めているが……あまり根を詰めるな。貴様に何かあれば、騒ぐものは少なくない」
「め、迷惑はかけてないつもりですっ!」
何か、どこかで取り違えている様子のハナを、信長はやれやれと溜息つきつつ、片手で宥めた。
「そうむくれるな。これを貴様にくれてやる」
そう言って、手に持っていた小さな箱をハナの目の前に差し出した。