▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第23章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -拾肆-
まず見えたのは、ぼんやりとした白地の袷。
鼻を擽る香に、胸が締め付けられる。
耳に静かな、吐息が流れる。
その胸元から、視線を上に辿っていく。
白銀の髪が乱れてその目を覆って隠し、静かに呼吸を繰り返していた。
光秀の寝顔が、そこにはあった。
光秀の腕が、ハナの頭を支えていた。
もう一方の腕は、ハナの腰に乗せられたままに、脱力していた。
静かだった。
ここはどこなのだろうか、だとか。
自分たちはどうなったのだろう、だとか。
心に疑問は浮かんでくるが、目の前の愛しい寝顔がそのどれもを悉く霧散していく。
まだしばらくはこのままで…。
起こさぬように、その名をそっと唇に乗せる。
しかしそれがまずかった。
声音を乗せずに模った、その名に胸が締め付けられる。
ハナの瞳に、涙が浮かぶ。
零れないよう、光秀の胸にその顔をそっと埋めた。
「―――…まだ、泣き足りないか?」
不意に、優しい声音がハナの耳を擽った。