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第22章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -拾参-
「まぁ…家康の言う事も一理はあったが…身内を騙すってのは、やっぱり気が滅入るな…」
秀吉の目が、苦し気に光秀を見た。
「どうにも…孤独なもんだ」
光秀もまた、秀吉を見あげ、苦笑を浮かべた。
「適材適所だ…俺には、それが性に合う」
家康が溜息をつく。
「側近が側近なら、主君も主君…揃いも揃って、バカ真面目ですからね…秀吉さんの大根っぷり、いつばれるかと冷や冷やでしたよ…」
「だ、大根って…お前なぁっ!」
「秀吉様は大根なのですか?」
「おいこら三成…お前どこ見て言ってるっ?」
政宗を振り返り、家康が再び盛大に溜息をつく。
「しっかり光秀さん引き止めてくださいよ。おかげでこっちの手間が増えたじゃないですか」
「てめっ…それでさっき、俺を殴りやがったのか!」
「まだ気が済まないんで、もう一発いいですか?」
「……く、くく…っははははははははっ!!」
男たちの目が一斉に振り返る。
そして信じられないものを見る目で、一様にそれを見つめた。
光秀が、声を上げて笑っていた。
「本当に……ここはバカばっかりだ……」
そう言って秀吉たちを見上げる光秀の顔は、まるで企みのばれた子供のようにあどけない笑みを浮かべていた。
「てめぇもちゃんと、勘定に入れとけよ」
「わかっているさ……だが」
ハナの体を、今一度両腕で包み、抱き込んだ。
「ハナには誰も、敵うまい…」
「―…そういえば、ハナの奴、やけに静かだな?」
光秀の胸の中に抱かれたまま、先程から泣き声すら聞こえなくなったハナの顔を秀吉が覗き込もうとした。
しかし、光秀の腕がさらにハナを抱き込んで、秀吉の目からハナを隠した。
そうして、人差し指を唇に当て、意地悪な笑みを浮かべて見せた。