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第21章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -拾弐-
「生きて…?―――…え、え?」
ハナの瞳に、戸惑いの色が浮かび、その首筋に手が伸びた。
「―――ど、して…傷が、ない…っ?」
「あるわけないでしょ。この短刀、偽物だから」
その声に、光秀とハナが振り返る。
刀身のない短刀の柄を、片手にふらふら遊ばせながら、家康が決まり悪げにこちらを見ていた。
その柄の中から、刀身を引き出して見せる。
「からくり刀、見たことない?まぁ、これは…今回限りの特別製だけど…」
そういうと、刀の先を自分の掌に突き刺した。
「家康っ手が!」
「よく見なよ」
己を案じるハナの声に、呆れたような家康の声。
見れば、その刀身は再び柄に吸い込まれ、中から赤い液体が滴っていた。
「……え、え…?」
混乱の中、ハナが家康の手の中のものと、自分の胸元を見比べる。
「え…じゃあ、この紅いのは…」
「―――…紅蜜華…っ」
光秀が、頭を抱えて呟いた。
「ご名答」
家康の後ろで、政宗がしたり顔で宣もうた。
「良かったな、ハナ。こいつは自分の命より、お前の方が大事なんだと」
「……政宗…っお前の謀か!!?」
にやり、と独眼竜がほくそ笑む。
「半分は、だな。恨みの半分は、てめぇの主君に言いやがれ」
そう言って、政宗の体が脇へと退く。
退いた先に、信長がいた。