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第8章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *織田信長ルート*
家康の御殿、その縁側に腰掛ける二人を、生ぬるい風が吹き抜けていく。
その風に髪を乱されるのも煩わし気に、柔らかそうな猫毛をその手でかき上げ、家康はどこかを見つめて思案していた。
ハナはそんな様子を、不思議そうに小首を傾げて見つめていた。
「あのさ…」
「…ぅ、ん?」
思いのほか、声が出ないことに驚いた。
家康は躊躇いがちに、その手をハナの頬へと伸ばす。
そうしてそっと、頬を流れる涙を拭った。
「……あ、れ?」
「やっぱり…泣いてることも、気付いてなかった」
呆れたような声音で言いつつ、それでも家康は小さく笑い軽くハナの頬をつねる。
「なんで…私、泣いて…」
「それは自分で考えなよ。…それで?俺の話は、聞こえてた?」
むっとしたような家康の声に、ハナは慌てて首を縦に振った。
「ごめんっ!聞いてた……べにみっか、だったっけ」
紅蜜華。
信長がハナに知らせず、食べさせた――
それは、媚薬なのだという。
「三成くんと、秀吉さんのところでは、何ともなかったんだけど…」
「それに、俺もね」
そう言って、家康が再び、ハナの頬を軽くつねって、意地悪く微笑んだ。
ハナは軽く頬を膨らませ、上目遣いに家康を睨む。
それは、恋情にのみ反応して効用を出す薬だと、ついさっき家康から受けた説明を頭の中で繰り返す。