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君の涙【ヒロアカ】

第10章 100%で望む理由



 「ここだ」

 轟様と書かれた病室の前に立つ。この扉の向こうに焦凍くんのお母さんがいるんだ。私のお母さんのお見舞いに来た時の記憶が蘇る。ちらっと隣を見ると、ドアを開けようと伸ばした焦凍くんの手が小刻みに震えている。思わず焦凍くんの両手を取る。いつかお母さんが私にしてくれたみたいに。

 『焦凍くん、大丈夫だよ。大丈夫』
 「………」

 突然の事で驚いた焦凍くんは、丸くした目に私を写した。大したことは言えないけど、せめて焦凍くんの背中を押せたらと思って手を握る。優しく笑った焦凍くんが私の手を握り返す。手の震えはなくなっていた。

 「ありがとう、」
 『うん。私はロビーにいるね』
 「ああ」

 そっと手を離す。大きく息を吐いて、ドアを開けて病室へと姿を消した焦凍くん。ここから先は私がどうこうする問題ではない。心の中で頑張れ、と焦凍くんに呟いて、静かな廊下を歩いた。


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