第9章 目指せ頂点
『……知ってます』
「だったら気色わりぃ呼び方すんな!分かったか?勝己だ、勝己!!!」
こんなにも自分の名前を主張するかっちゃんを初めて見た。ようは、かっちゃんも名前で呼んで欲しいんだ。そうならそうと正直に言えばいいのに、わざわざこんなに機嫌を損ねなくても。そう思うとなんだか急にかっちゃんが可愛く見えてきてしまった。
「何笑ってんだ殺すぞっ!」
『だってなんかかっちゃんが子どもみたいで』
「あ゛あ゛!?ぶっ殺されてぇのか!?」
『ごめんごめん。冗談だってば!』
「違ぇよ!!違くねぇけど、名前で呼べっつってんだろっ!!」
『そっち!?』
2人の声が響き渡う廊下をなんとなく歩く。ギャーギャー言いながら歩いていると、かっちゃん…勝己の足がふと止まった。
「着替えてこい。そんな格好でうろちょろされたら目障りだ」
そう言って1人先に歩き出してしまった勝己。横には扉がついていて、上には女子更衣室と書かれていた。ガニ股でガツガツと歩く勝己の後ろ姿を見送りながら、更衣室のドアを開けた。
『……てかなんで女子更衣室の場所知ってんの?』
それぞれの思いを胸に、あっという間に時は来る。
先程まで何にもなかったグラウンドに大きなコンクリートのフィールドが設置される。体操服に着替えクラス用の観客席に座り、1回戦を見守る。1回戦はデクと、普通科の見たことある人だ。心操くん、というらしい。
夢中になって試合を見ていると時間が経つのを忘れてしまう。心操くんの洗脳の個性で危うく場外負けしそうだったが、なんとか振り切り2回選出はデクが勝ち取った。
次の試合、焦凍くんと瀬呂くんの試合は、言葉通りあっという間に決着が着いてしまった。圧倒的な焦凍くんの力に会場の誰もが空いた口が塞がらなかった。
上鳴くん対塩崎さん…の試合も見たかったのだが、次は私も試合なので控え室で待機していた。どっちが勝ったのか後で聞こう。
«さぁーどんどん行くぞ。頂点目指して突っ走れ!ザ・中堅ってかんじ!?ヒーロー科飯田天哉!!VS個人的にはこっち応援したい!同じくヒーロー科!! »
「くん、よろしく!!」
『こちらこそ。手加減なしで来てね!』
「ああ」
« スタァーーーット!!»