第5章 夢を追う覚悟
それにしても大丈夫か。さっきから顔が火照っているし、息も荒く、ふらふらしている。絶対大丈夫ではないその状態で、それでもは帰ろうとする。そしてその場でふらりと倒れた。
の家は知らないし、このまま放置しておくわけにもいかない。には申し訳ないが、俺の家まで辛抱してもらう。腕の中のは息を荒くしてとても辛そうだ。
家に誰もいなくて助かった。急いで布団を敷いてを下ろす。俺の布団で悪いが他に休めるところはない。額や首の汗をタオルで拭き取る。看病なんてした事ねぇからわからないが、果たしてこんな感じでいいのだろうか。左手で汗を拭い、右手で額や首などを冷やす。
見た目よりずっと細く白く透き通るような首筋。赤く火照った頬。それらを濡らす汗。不謹慎にものこの姿にやましいことを考えてしまう。そんな自分に嫌気がさし、頬に当てた手を離そうとした時、の小さな手が俺の手に重なった。高鳴る心音が手のひらから伝わりそうで、手を引きたいのにもっと触れてほしいと矛盾した気持ちが渦巻く。
『……ぅ…ん』
「、気ぃ付いたか?」
『と、どろき…くん?…あれ、私……』
意識を取り戻したの顔色は、先程よりだいぶ良くっていた。ひとまず安心だ。かと言ってまた倒れられては困るので、そのまま暫く休んでもらうことにした。
回復したは何度も謝って、何度もお礼を言った。大したことはしてねえが、はお礼をすると言ってくれた。
靴を履いたが玄関を開けた時、そこを塞いでいたのはクソ親父だった。最悪なタイミング。は親父の顔を見て俺の顔を見て慌てふためいている。
一言二言親父と話したは、先程熱で倒れたとは思えないスピードで夜道を一人走っていった。送っていくと言おうとしたが、それを言い切る前にの姿は見えなくなっていた。というか、ちゃんと家まで帰れるんだろうか。
「、と言ったな。あれはお前の恋人か?」
「……そんなんじゃねえ」
まだ…恋人とかそんなんじゃない。
ただあの姿を見てからもっと知りたいと思うようになった。もっと近付きたい。
お礼、何を頼もうか。