第5章 夢を追う覚悟
『…ごめん。なんか、すごい迷惑…かけちゃったね』
お店を出て轟くんに謝る。轟くんにとても見苦しいものを見せてしまった。おかげで気持ちがとてスッキリとしている。それにお茶代も出していただいて…申し訳ない気持ちとありがたい気持ちでいっぱいだ。
「別に構わねぇよ。俺がと話したかっただけだし……それより本当に大丈夫か?」
『へーき、へーき!目は冷やせばなんとかなるし~』
「そうじゃなくて、すげぇフラフラだぞ!」
確かになんだかふわふわしていて、頭がガンガンする。全身が火照っていて体が重い。早く帰って横になろう。
『うん……じゃ、あ…わたしはここ、で──』
「っ!?」
なんだろう。すごく冷たくて気持ちいい。冷たくて柔らかくて優しい。それがなにか知りたくて、もっと触れたくて、そっとそれに自身の手を重ねる。
『……ぅ…ん』
「。気ぃ付いたか?」
『と、どろき…くん?…あれ、私……』
触れたのは私の左頬にある轟くんの右手だった。ひんやりしていてすごく気持ちいい。
それにここはどこだろう。確かお見舞いに病院に行って、その帰りに轟くんに会って、お洒落な喫茶店で話していたような。
「急に倒れるから驚いた」
『…倒れた?私が?』
「ああ。すげぇ高熱だ。もしかしてずっと我慢してたのか?」
『ううん。全然元気だったよ』
「んなわけねぇだろ」
今朝もいつも通り元気で、頭が痛いとか寒気がするとかなかったし食欲もあった。信じてもらえないかもしれないが、本当にさっきまで元気だったのだ。
「とにかくもう少し休め。また倒れられたら困るからな」
『はい、すみません』
轟くんの右手が額に移動する。当てられた額が次第に冷たくなっていく。今までずっとこうして冷やしてくれていたのだろう。おかげで体が随分楽になった。
『ところでここはどこ?』
「ああ、俺の家」
『えっ、轟くんの家?』
「の家知らねぇし、道端にそのまま放って置く訳にも行かねぇだろ」
『それはそうだけど…』
ということはこの布団は轟くんのだろう。急に倒れて、ここまで運んでもらって、看病してもらって…どうやら私は迷惑をかける天才らしい。