第4章 形から入る人
上鳴くんとの会話を遮られ、かっちゃんのその行動はクラスに沈黙を与えた。せっかくクラスメイトと仲良く話せるチャンスだったのに。みんなの方へ振り返り片方の手でゴメンのポーズをすると、驚きながらも手や首を振ってくれた。
『かっちゃん、腕痛いよ』
「……悪ぃ」
『どうしたの?』
「なんでもねぇ」
何でもないわけがないのだが、話したくないのなら無理に聞く必要は無い。なんだか少しだけ寂しそうに歩くかっちゃんの隣に並ぶ。
「かっちゃん!!」
「ああ?」
『デク』
昇降口でかっちゃんを呼び止めたのは、保健室に行っていたデクだった。服装も戦闘服のままで、固定された右手が痛々しく見える。
「これだけは君には言わなきゃいけないと思って…」
デクの個性は人から授かったものだとかっちゃんに話す。名前はちゃんと伏せて。デクはかっちゃんに誠意を込めてこの話をしたんだろうけど、かっちゃんとしてはどうでもいいみたいで。
「こっからだ!俺は…こっから…!いいか!?俺はここで1番になってやる!俺に勝つなんて二度とねえからな!クソが!!」
「爆 豪 少年!!」
バビューンという効果音を付けて登場したのは先生だった。なんだか今日かっちゃんは呼び止められるのが多いな。
先生は落ち込んでいるであろう生徒を励ましに来たのだが、それは見事に空振りに終わった。心の中でどんまいコールをパパに送る。
「教師って…難しい……おや!?少女は爆豪少年と一緒に帰るのかい?」
『うえっ!?…あ~、まあ、えーっと…』
「一緒に帰ろうがオールマイトには関係ねぇだろ。おら帰るぞ」
『…せ、先生さようなら。デクもまたね、お大事に~』
「あ、うん。ばいばい」
はははと苦笑いをしてその場をやり過ごす。先生、いや、パパの視線が刺さるように鋭くなった。家に帰ったら絶対なんか言われる。かっちゃんに今日はゆっくり帰ろうと言うと、なんでに合わせなきゃいけねえんだよ、と言われた。
それにしてもさっきのかっちゃんの言葉…今までずっと自分が1番だと絶対的な自信を持っていたが、デクと戦闘を交えて、より上を目指そうと少しずつ変わってきている。こんなふうにかっちゃんを変えたのは紛れもなくデク。ずっと無個性でも夢を諦めずにいた幼馴染は、人を動かす力を持っている。