第12章 レンジでチンして
『えっと…ここ、だよね?』
「…の、はず。住所は合ってるけど」
新幹線で45分。たどり着いた場所にはボロボロの建物がそびえ立っていた。WELCOMEと書かれた看板があるけど、全く歓迎されている感じがしない。
パパからの話は、デクと私に指名が来ていた、という内容だった。かつて雄英で1年だけ教師をしていた…パパの担任だった人らしい。ワンフォーオールのこともデクのことも知っているらしい。それはともかく、なぜ私にまで指名が来たのかは謎だ。
『とりあえず入ろうか』
「そうだね…雄英高校から来ましたー…緑谷出久です」
『です。よろしくおね──』
「ああああああ死んでる!!」
『ええっ!?』
「生きとる!!」
「生きてる!!」
『ええっ!?』
扉を開けるとそこは殺人現場でした…かと思った。なんとも紛らわしい料理?を運んでいる時に盛大に転んだらしい。なかなか強烈なお方だ。
「誰だ君らは?」
「雄英から来た緑谷出久です!」
『です!』
「何て?」
「緑谷出久です!」
『です!』
「誰だ君らは?」
プルプルと震えながら杖をつき立ち上がるご老人。すぐにペタンと座って転がっているソーセージを踏み潰した。とりあえずこぼれたケチャップとソーセージ、割れたお皿を拾おうと、荷物を下ろしてその場に屈む。
「す、すみません。ちょっと電話してきますね」
「撃ってきなさいよ!ワンフォーオール!」
『え』
デクのコスチュームケースを勝手に開けて、中身を吟味し始める。急にそんなことを言われ、デクも私も目が点になる。
「僕、早く…早く力を扱えるようにならなきゃいけないんです…オールマイトには…もう時間が残されてないから…だからこん…おじいさんに付き合ってられる時間はないんです!」
『デク、待っ──』
建物から出ていこうとするデクを遮るご老人─グラントリノさん。今私の隣にいたのに、入口の上の壁にしがみついている。
「だったら尚更撃ってこいや。受精卵小僧」
コスチュームに着替えたデクは、グラントリノさんにワンフォーオールを撃とうと立ち向かうが、彼の速さに追いつけず取り押さえられてしまった。