第11章 トライアル
雨。ポツポツと傘に落ちる音が心地よい。ジメジメしていて、せっかくセットした髪が意味を成さなくなるのは嫌だけど、それでも雨の日ってなんか好きだ。
「あっ!あのコじゃね?」
「ほんとだっ!すっげえ~生で見ると更にいけてんじゃん」
「ねぇねぇお姉さん」
ひとつだけ気になるのは、傘をさしても足が濡れてしまうことだ。これに関してはどうしても回避できない。もっとこう…全体を覆うような傘ってないのだろうか。あ、でもそしたら前が見えなくなるのか。いやでもビニール傘にしたら前を覆っていても見えるぞ。あれ、もしかして私って天才?全身濡れない傘発明したら売れない気がしないぞ。
「ちょっと無視しないでよ~」
「おーい!…って聞こえてねぇな」
でも、傘ってそんなに需要あるのかな。ヒーローになったら雨の日も晴れの日も関係ないもんな。いちいち傘なんて持って戦うなんてしないし。むしろ雨に濡れて強化される個性の人とかいるかも。
「雄英高校ヒーロー科のちゃんっ!!」
『えっ!?』
「あ、やっとこっち向いた」
突然横から現れた謎のお兄さん2人。知り合いかと思ったけど面識のない人だ。一瞬上鳴くんかと思ったけど、顔が全然違う。雄英高校の制服も着ていない。
『え…あの、私?』
「そうそう!いや~体育祭見たよ」
「凄かったな~まじ可愛かったわ!」
「今から学校?良かったら俺らも一緒に行っていい?」
『いや、えっと…』
「そうだな。ちゃん可愛いから変なやつに絡まれないように、俺らが守ってやるよ」
ケラケラと笑う謎の男2人。変なやつとはあなた達のことなのでは…と思うがもちろん言えるはずもなく。どう振り切ろうか考える。傘をぎゅっと握って足早に離れる。
『す、すみませんっ!私急いでるのでっ!!』
「俺らも一緒に行くからさ~」
「そんなに急がなくっても遅刻しないって」
思ったよりもしつこい。公共の場で個性が使えたら、ひょいっと飛んでいくのに。逃げられないようにしているのか、男の人に挟まれながら道を歩く。早く、早く学校に着いて。
「ちょっとそんなに早く歩いたら転ぶよ」
『ひっ!』
傘が邪魔していたが、男が手を伸ばして肩に触れる。恐怖を抱き思わず声を上げる。身の危険を感じたので、2人を振り切って思いっきり走る。