第8章 Belief
腕から生み出した沢山の糸を絡み合わせながら、緑谷くんの足場に放つ。鞭のようなそれを緑谷くんの障害になりそうな尖った氷や瓦礫に打ち付けた。
緑谷くんは先の落とされた氷を蹴り、一気にステインの懐に入った。同時に飯田くんもステインの真横に飛ぶ。
そして、緑谷くんの拳と飯田くんの蹴りがステインに直撃した。
ステインの動きが止まる。──チャンスだ!
そう思ったのも束の間、ステインは宙を舞う刀を掴んだかと思うと飯田くんに刃を向けた。
私は彼らの足元まで伸ばしていた鞭で、刀を弾き落とした。
呼吸が早くなる。炎熱からか、それとも緊張からか、全身に汗が滲む。
「今だ!畳みかけろ!!」
轟くんの声と共に飯田くんは足を振り上げる。
「お前を倒そう!今度は犯罪者として……
──ヒーローとして!!」
空を切る音。そして、鈍い打撃音が響いた。飯田くんの回し蹴りがステインの腹部に決まり、さらに轟くんの炎が立ち上った。
三人が落下する先に轟くんが氷壁を創り出した。緑谷くんと飯田くんはクォーターパイプのような氷上をつるつる滑り私たちの傍に戻ってくる。
私は慌てて、二人が頭をぶつける前に綿でキャッチした。
「立て!まだ奴は……」
轟くんの声にばっと皆がステインを見上げる。
彼は氷壁に身を囚われたまま、気を失っているようだった。
「お、終わった……の?」
「さすがに気絶してる……っぽい」
私が小さな声で沈黙を破ると、緑谷くんが様子を窺いながら口を開いた。
ほっと息をついて個性を解除すると、ネイティブさんを守っていたベールは形を失い、糸と共に路地の隅へと風に流されていった。
「じゃあ拘束して通りに出よう。何か縛れるものは……」
「私がやるよ」
「綿世……そうだな、頼む」
轟くんが炎で氷を溶かすと、緑谷くんが横たわる敵の武器を取り外す。その間に私は背中からもこもこと綿を出してそこからロープをひたすら垂れ流した。
緑谷くんがもういいよ、と慌ててストップを入れるまで出したものだから、ロープはかなりの長さになっていた。
座り込んだままの飯田くんは、呆然としながらステインを拘束する私達を見つめていた。