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【ヒロアカ】Don't touch me.【轟】

第8章 Belief



職場体験三日目。
パトロールの後はまた稽古をつけてもらった。
そして、再度護衛任務の流れを確認し、戻ってきた二人のサイドキックの方と入れ替わりで米田さんの元へ出発した。
米田さんと合流し、現在新幹線で都市部に向かっている。もう日は落ちていて外は薄暗い。

「じーちゃん、今どの辺?」
「ヤマゴンだと言っちょるに。ったく。……そろそろ保須市に入るな。あと少しだよ」
「オーケーヤマゴン」

もうすぐ保須か。やたらとその地名を耳にする。飯田くんは大丈夫だろうか。轟くんももう保須にいるのだろうか。
気になって携帯を確認しようとした、その時だった。

緊急停止のアナウンスが流れた直後、新幹線の車体が大きく揺れた。身体が座席に打ち付けられる。
前の方の車両からは叫び声が聞こえた。

「何事だ!?」
「ここで待っとれ!コメちゃんもここを動くなよ。んでもってケン!誰も怪我さすな!」
「了解!」

ケンは米田さんと乗客を落ち着かせている。窓の外を見ると、脳無らしきヴィランの姿があった。見た目はUSJの時と違うけど──脳味噌が剥き出しの敵なんて脳無以外に考えられない。

「ケン!ヴィランです!」
「なんでこんな所に……!」

ケンは苦々しげに顔を歪める。一体何が起きてるの?
保須にヒーロー殺しだけでなく、脳無まで。額に浮いた汗を手首で拭うが沸き起こる不安は払拭されなかった。

「おいケン!奴は今他のヒーローが押さえてくれている!今のうちに乗客の避難を!」
「了解!皆さん、落ち着いて、順番に降りてください!」

ケンは線路に降り立ち、外の様子を窺いながら乗客に避難の指示を出した。私は車両に残り後方から誘導をする。

泣きじゃくる声が聞こえて下を向くと、男の子がお母さんの足元で俯いていた。お母さんは抱っこ紐の中の赤ちゃんをあやしながら男の子の手を引いている。
私は屈んで男の子に声をかけた。

「怖いよね、でも大丈夫だよ。今強いヒーローたちが悪いやつ倒してくれているからね!」
「ヒーローきてる……?」
「うん。ヒーローたちみんな頑張ってるよ!だからあともう少し、一緒に頑張ろうね」
「うん……ぼく、がんばる……!」
「その意気だよ!」

笑って男の子の頭を撫でると、お母さんが僅かに表情を和らげてありがとうと頭を下げた。
こんな時こそ笑って、安心させてあげたい。かつて私がそうされたように。
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