第8章 Belief
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部屋の電気を消し、畳に敷かれた布団に寝そべった。
愛しのお布団だぁ……もうだめ、動けない。
倒れる寸前までしごかれるとは思いもしなかった。ぎゃふんと言わせられたかは微妙なところだ。
ヤマゴン超絶スパルタだった。
でもその分、得るものは大きかったと思う。
異なる形状の綿を同時に操作すること、綿を自身の移動に利用できるよう調整すること。
移動に関しては瀬呂くんのような使い方を目指している。
それらが当面の課題になりそうだ。
でもまさか職場体験で直々に稽古つけてもらえるなんて。他のみんなはどんな事しているんだろう。
ふと、畳に放っていた携帯に通知が来ているのに気が付いて手を伸ばした。
轟くんからメッセージだ。
“もう寝たか?”
だって。私はそれに、
“まだ起きてるよ!かろうじて”
と返した。
轟くんどうしたのかな。職場体験どうだったかな。
ぼんやり考えていたら携帯のバイブ音が鳴った。着信だ。
「おお、轟くん。お疲れ様ー」
『お疲れ様。……声が眠そうだな』
「えっそうかな?」
『ああ。なんつうか、ぽーっとしてる』
うーん、自分ではよくわからない。
電話口の轟くんの声もどこか柔らかく聞こえるけれど。でもそれはぽーっと、とは違うかな。
「電話珍しいねぇ。どうしたの?」
『……無事か気になった』
「ふふ、何ともないよ。ヴィランもいないし。平和な地域だからね」
『そうか。よかった』
電話で聴く轟くんの声が近くて、むずがゆい気持ちになる。低く落ち着いた声は癒しであり毒でもある。でも今の私には癒しの方が大きいみたいで、ついうとうとしてしまう。