第8章 Belief
「奴はね、ちょうど君に似た個性だったよ。だから気になって指名しちゃったんだな。顔見知りだったからってのもあるけどね」
私に似た個性……思い当たるとしたらどこに住んでるかも知らない父だけだ。
父はヒーローでは無いから、もしかしたら親戚の誰かとか?
──まさかね。
そんな繋がりがあったら面白いけど、と胸中で呟いた。
「努力家で、冷静に見えて無鉄砲で……そんな所もよく似てるなと思ったよ」
「ほら、じーちゃん行くよ」
広い世界、個性も多種多様。私が知らないだけで似た個性の人なんて大勢いるのかもしれない。
自分に似たヒーローの姿を想像しながら、壁にひびの入ったビルに背を向けた。
その後、パトロールを終えて事務所で昼食を取った。昼食は商店街の『てづくり弁当 梅屋』で購入したお弁当だ。
いろんなおかずが入っていてそのどれもが美味しかった。
「さ、腹ごなしに散歩しながら次の仕事に行くよ」
湯呑みを置いたヤマゴンがすっと立ち上がりマントを翻した。
大きな声で返事をして黒いマントを追いかけると、後からケンも着いてきた。
何の打ち合わせだろう?副業だって言ってたけど結局聞きそびれてしまっていた。
──というか、これ散歩の速さじゃない。
近道でもしているのか、オフィス街のビルの隙間を縫うように進む。
もしかすると、敢えて人気のない道を選んでるのかな。
ヤマゴンは競歩でもしているみたいに進むから私は置いていかれないよう小走りで彼の背中を追いかけた。