第8章 Belief
「お待たせしました」
「きたきた!じゃ早速自己紹介。こっちがヤマゴン、俺はケンだよ。君は?」
「えっと、マリー、です!よろしくお願いします。ヤマゴンさん、ケンさん」
ぎこちなくヒーロー名を名乗り頭を下げると、二人は楽しそうに笑った。
「あははっ!“さん”はいらないよ」
「いらんいらん」
ケンさん、もといケンの隣に立つのはあのスーパーおじいちゃん。今日はいつもよりその姿が大きく見えた。
私が呼び直すと彼、ヤマゴンはよろしくと朗らかに笑った。
「なんでヒーローだって教えてくれなかったんですか?」
素朴な疑問を投げかける。なぜはぐらかしていたんだろう?
「このスーツを脱いだらただの山盛欣勝《やまもりごんしょう》だからねぇ」
「えっそれコスチュームだったんですか」
「あたぼーよ!このマントが何よりの証拠だよ」
いつもと変わらぬ白いタンクトップにベージュのハーフパンツは普段着のように見えたけど違うらしい。彼の背には黒いマントが揺れている。
つまり教えてくれなかったのはオフだったからってことかな。
失礼ながらヤマゴンって怪獣みたいな名前だと思ってたけど、本名の略なんだ。
「俺も雄英卒なんだぜ。よろしくな!」
「おお!じゃあ先輩ですね。よろしくお願いします」
「この職場体験ではヤマゴンとしてヒーローのお仕事見せるからね。じゃ、早速行くよ!ケン、マリー!」
「はい!」
「はいよ!じーちゃん」
「じーちゃんじゃないぞ!」
「ヤマゴン!」
ヤマゴンとケンのやり取りにくすりと笑う。
ケンはヤマゴンのお孫さんだとか。ヒーロー一家で他にサイドキックが二人いてそのどちらもヤマゴンの家族らしい。