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【ヒロアカ】Don't touch me.【轟】

第6章 Ripple



「大丈夫そうだな」
「うん!あっ、まずいと思ったら逃げてね」
「あぁ。……次、腕触るぞ」
「はいっ」

轟くんの手がゆっくりと上がって手首に触れた。ぞく、と背中に寒気が走る。
──私、ヴィランに手首掴まれて、それで……

「待って……だめ」

彼の手を押さえて、深く呼吸する。轟くんはすぐにその手を退かしてくれた。息を整えて震えを抑えるように轟くんの指を握ると、その感触がどこか懐かしくて、随分落ち着いた。

「……悪ぃ」
「謝るの、禁止。特訓お願いしたの私なんだから気にしないで」

手首に触れられた時、一瞬だけど記憶が蘇った。私はヴィランに手首を掴まれ、暗い建物に連れていかれたんだ。もしかしたら、触れられる事であの時の事を思い出せるかもしれない。

もう一度触ってと頼むと轟くんは沈黙を返してから頷いた。轟くんは私の様子を窺いながら指先で撫でるように手首から腕にかけて優しく触れる。落ち着かない感じだけどさっきほどじゃない。
擽ったくて小さく声を漏らしてしまって、慌てて反対の手で口を押さえた。

「つらくないか」
「んっだいじょぶ」

特訓と言ったけれど、轟くんの触れ方は優しくてまるで治療でも施されているかのよう。口を押さえている方の手を取られ、同じようにそっと手首に触れた。空いた反対の手はゆるゆると指を絡めて繋がれた。

ずっとどきどきしてる。怖いやら恥ずかしいやらで私の心臓はフル稼働中だ。時折やってくる寒気に耐えながら繋ぐ手に力を込めた。

一朝一夕にはいかないとわかってたけど、いろんな意味できつい。轟くんの顔は近いし、優しく触れる手は擽ったい。それに加えて私の全てを飲み込もうと押し寄せてくる恐怖心。かつてないほどに精神力が試されている。

以前こういうトラウマは時間が解決してくれると言われた。それを短期間で克服しようとしてるんだ。きついのなんて当然だと思う。こんなとこでへばってちゃいけない、と自分を奮い立たせるけれど、心の奥底にはやめて、とうずくまる自分が棲みついていた。

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