第6章 Ripple
放課後、轟くんの席に寄って声をかける。
「今日、平気?」
「ああ」
「ありがとう!じゃあ教室の使用許可貰ってくるね!」
職員室に行き、空き教室の使用許可を貰った。以前はトレーニング室だったが個性使用による損壊が激しかったため、新たに校外に作り直したらしい。よって、今は部活動や文化祭準備などで貸し出す程度であまり使われていないとのことだった。
教室と同じ大きな扉を開ける。広い室内には机ひとつ無く、閑散としていた。手入れはきちんとされているようで目立つ埃は見当たらない。窓を開けて空気を入れ替えると、爽やかなそよ風がカーテンを揺らした。
「座ろっか。ちょっと待ってね」
ブレザーを脱いでシャツの袖を捲る。腕からもこもこと綿を繰り出して形を整え、簡易的なクッションを作った。それを床に並べて座ってみると丁度いい座り心地だった。クッションを叩いて轟くんにどうぞ座ってと促す。轟くんは便利だな、と零して腰を下ろした。
「では、よろしくお願いします」
「ああ。じゃ始めるぞ」
「はい!」
お蕎麦屋さんで話し合った通り、まずは手に触れて試す。私は向き合った彼に両手を差し出して、内心ひやひやしながら熱が降りてくるのを待つ。ゆっくり、そっと、大きな手がやって来て私の手に触れた。びく、と肩を揺らしてしまったけど、大丈夫。暴走していない。
「やった……すごい、なんでだろ!」
「もう少し触れてもいいか」
「うん!」
重ねただけの手のひらを緩く握られたり、指を絡めたりする。轟くんの手と私の手の温度が混ざり合う。だんだん恥ずかしくなってきて顔まで熱くなってきた。
男の子とこんな風に触れ合ったことなんてないから、そもそも耐性がないんだ。
「顔赤いぞ。大丈夫か?やめるか?」
「だっ大丈夫!」
手の甲に触れた彼の指先から目を逸らす。ふと轟くんの顔に視線を移せば、彼は柔らかな表情をして繋がれた手を見つめていた。