第6章 Ripple
翌日、休み時間。
指名数が発表され、各自職場体験先の希望を提出することになった。また、それに伴いヒーローネームを決めた。
そして、なんと!ヒーロー科で唯一、第一競技で脱落した私にも指名が入っていた。それも二票。
ろくな活躍もしていないのに何故だろうか。でも凄く嬉しいしありがたい。
「綿世はガッツあったからな!あの轟を追い抜いたし!」
「爆豪に伸されなきゃもっと上行けてたぜ」
「つまり上に行くには爆豪くんを越えなきゃいけないってことだね」
「あぁ!?誰が越えさせるか!」
切島くんと瀬呂くんと話していたら爆豪くんに怒鳴られた。それをするっと躱してプリントに並んだ二つの事務所名を見つめる。両方とも聞いたことのない事務所だ。どちらにしよう。
携帯で事務所名を検索して、あ、と驚く。
「スーパーおじいちゃん……!」
指名のひとつは朝公園で見かけるスーパーおじいちゃん──彼は現役ヒーローだった。マッスルヒーローヤマゴンというらしい。彼の活躍をまとめた記事には、軽々と瓦礫を持ち上げ人命救助にあたる画像が何枚か掲載されている。それを見つめ、直感的に、彼の事務所にしようと決断した。
職場体験は来週からだ。忙しくなりそう。そろそろ授業が始まると思い、飯田くんを見やったけれど何か考え込んでいるようだった。いつもなら、皆に席に着くよう指示を出すのにそれが無い。
インゲニウム……ヒーロー殺し。飯田くんの見覚えのある瞳の色に胸が大きくざわめいた。