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【ヒロアカ】Don't touch me.【轟】

第6章 Ripple



あれから、朝食や家の事、明日の授業の予習復習を済ませてシャワーを浴びた。髪を伝う水滴をタオルで押さえ拭きながら、何を着ていこうか考える。
どんな格好をしたらいいのか分からない……。
お店に入るしあまりラフすぎるのも良くないよね?かといって制服は違うし。悶々と悩んだ結果、ラフとよそ行きの中間くらい、母と電車でちょっと遠出する時のスタイルに決めた。

髪を乾かして着替えて、鞄を用意して……あっという間に十二時だ。
我ながら実に無駄のないタイムスケジュール。部屋のぬいぐるみを並べ直しながら、合理的に時間を使ってるなぁと相澤先生の姿を思い浮かべて笑った。

軽快なインターホンの音が来客を知らせる。ぱっと飛んでいってインターホンのモニターを見る。やっぱり轟くんだ。
すぐに応答して携帯を持ち、鞄を肩に引っ提げて玄関を出た。

「お待たせー」
「お、」
「ん?待ってね鍵閉めるから」

ちゃんと施錠して改めて轟くんに向き直る。私服姿はなんだか新鮮で、つい上から下まで眺めてしまった。

「轟くん私服もいいねぇ」
「綿世も、新鮮だ」

轟くんの横を歩き、お蕎麦屋さんに向かう。さらさらと流れる風が心地良い。風に揺れる紅の髪と横顔を見つめた。
どこかすっきりしたような、穏やかな表情をしていて、お母さんとちゃんと話せたんだなと思う。もうあの憎しみを宿した瞳は無かった。

「そういや、お前にまだ話してなかったな……親父とお母さんの事」
「大丈夫だよ、話さなくて。大まかには理解してるし。辛いこと思い出させてしまうのは嫌だよ」
「綿世には知っていて欲しい」
「……わかった」

人通りの少ない住宅地をゆっくりと歩きながら進む。
轟くんはぽつり、ぽつりとお父さんのこと、お母さんのこと、火傷のこと、昨日のこと……全て話してくれた。漠然と、母を辛い目に合わせた父に復讐を──ってことだと考えていたけど事実は壮絶なものだった。
私には到底推し量ることの出来ない苦しみ。それをずっと一人で抱えていたんだ。

「綿世?わ、悪ぃ……大丈夫か」
「えっ、あっ、ごめん。涙腺緩いなぁもう」

意図せず涙が零れ落ちていた。あぁ、なんでかな。このところ泣いてばかりだ。ぎゅっと目を瞑り涙をせき止めて、ハンカチで押さえる。目を開けると轟くんが横でおろおろしていて、それが可愛くて小さく笑った。


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