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【ヒロアカ】Don't touch me.【轟】

第5章 Fight



「うっ……うう……」

堪えても堪えても私の意思なんて関係なしに溢れて止まらない涙。
人気のない暗い通路で膝を抱えて、ぐしゃぐしゃの顔を隠す。

くやしい、くやしい。
あと一歩早く爆破に対処できていたら。
あと一歩早くゴールしていたら。

頑張るって決めたのに。頑張ったのに。
たりなかった。適わなかった……。

一回戦敗退。
私に突きつけられた現実は非情な物だった。
唇を噛んで止まらない嗚咽を抑える。

何がいけなかったの。
何が足りなかったの。

悔しくて苦しくて堪らなかった。

「ひっ……や、だ……泣くなわたし……」

笑っていようって決めたのに、笑顔を浮かべようとすればするほど涙はこぼれ落ちて膝を濡らしていく。
どんな顔して皆の元に戻ればいいだろう。

二つの足音が聞こえる。
こんな情けない姿、誰にも見られたくない。
乱暴に顔を拭って立ち上がり、どこかに隠れようとしたけれどそれは叶わなかった。

「綿世」
「ふ、二人とも。二回戦進出おめでとう!」
「あっ綿世さっ……ありがとう」

轟くんと緑谷くんだった。
私は涙を堪えて精一杯笑って見せた。

「きっと大事なお話でしょ?私、先に戻ってるね。次も頑張って!」
「うん。あの、また、後で……」

口元が歪んで震えてしまう声。これじゃ泣いてたのバレバレだ。
それに触れないでいてくれる緑谷くんは本当に優しい人だと思う。
轟くんは俯き、何かを考えているようだった。
体育祭が始まってからの彼は怖い顔ばかりしている。きっとお父さんの事だろう。彼にそんな目をさせる人を他に知らなかった。

「轟くんは轟くんだよ」

通りすがりざまに轟くんに囁いて、今度こそちゃんと笑顔を向ける。がんばれ、負けるな。
また瞳に溜まった雫を拭ってその場を後にした。


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