第5章 Fight
しばらく走ると崖と僅かな足場と足場を繋ぐロープ──綱渡りステージが行く手を阻む。
この障害物競走は運動能力、応用力、判断力……ヒーローに必要とされる力が試されるようになっているんだ。
どんな状況でも乗り越えて見せろ、という雄英らしい競技だ。なんて飯田くんみたいなことを考える。全然余裕じゃないし息も切れ切れなのに何故か頭は冷静だった。
両手を見つめると、手のひらの真ん中や指の付け根に固い豆が出来ている。朝晩、公園のクライミングウォールを登って出来た勲章だ。
大丈夫、きっといける。恐怖心を誤魔化して崖に繋がれたロープを握ってぶら下がる。手足を使って地道に進んでいく。きついけど思ったより安定して渡れた。
後からどんどん人がやって来て、気づけばだいぶ遅れをとってしまっていた。トップを走る轟くんはもう向こう岸だ。
やっとの思いで反対側に渡り終えてまた走り出す。
ゴールまであとどれくらいだろう。
今、前に何人いるんだろう。
一定のリズムで浅く呼吸して、滴る汗を片手の甲で拭った。