第5章 Fight
第一種目は全員参加の障害物競走。コースは外周約四キロ。
沢山の生徒達の中、位置について構える。
「スタート!」
ミッドナイト先生の声で皆一斉にゲートを潜る。狭い通路を押し合いながら抜けようとするため、全然先へ進めない。
──これはまずい……けど!
私は腕から出した綿を両足に纏わせる。靴ごと厚く、厚く。
突如、地面が一瞬にして凍りつきよく知る紅白が駆け抜けていく。轟くんだ。速攻が得意な彼ならやると思った。
表面だけ凍った綿を蹴散らし難なく抜け出す。身動きの取れなくなった生徒達を追い越して凍りついた地面を駆けた。
滑る、けどこれもUSJの時に経験した。足の裏全体で着地して摩擦を減らせば滑りにくくなる。それでも走れば転びそうになるけど気にしていられない。前に進むんだ。
「っわ、このロボット……入試の時の!」
巨大仮想ヴィラン、ロボインフェルノ。コースの拓けた場所に出たかと思えば何体も待ち構えていた。
前に立つ轟くんは上体を低くし、右手で地に触れる。凍りつき、浮き上がる地面。そして彼が手を振りあげると仮想ヴィランは一瞬にして凍てつき、活動を停止した。
チャンスだ!皆が呆気に取られる中、私は仮想ヴィランが凍りつくと同時に勢いよく氷上を滑り、轟くんを抜いて隙間から通り抜ける。轟くんの戦い方、この一ヶ月なんだかんだ近くで見てきた。彼はまず速攻、相手を凍らせて封じるんだ。
「綿世……!」
後ろから轟くんの声が聞こえた。足は轟くんのが速い。すぐに抜かされてしまうだろう。腕や背中から大きな綿を出して大玉転がしの如く後方に転がす。所詮綿、風を受けると飛んでいってしまうがちょっとした妨害にはなる。
後ろから聞こえた舌打ちと地を蹴る音。
依然として一瞬たりとも油断できない状況だ。もこもこと綿を放って駆ける。綿を凍らせて防いだとしてもむしろ進路の妨げになるだろうと思っていたが、彼はいとも簡単にその考えを覆した。
「悪ィな綿世」
「っうそ…!」
後ろから襲いかかった氷の大波。それは綿を食らい私の頭上へと押し寄せる。轟くんは氷を駆け上がりあっという間に私の先へと躍り出た。
まさか上から抜かされるなんて……!
呆けている時間はない、慌てて先を行く背中を追いかけた。