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【ヒロアカ】Don't touch me.【轟】

第10章 Infatuate





来たる日曜日。今日は午後から轟くんのお家で勉強する。
轟くんはお父さんは留守だって言ってたけど、それでも何だか緊張する。失礼のないようにしなくては。

玄関で靴を履いて傘を手に取った。

「まり、ケーキ忘れてるー!」
「あ、そうだった!ありがとう」

お母さんが持ってきた紙袋を受け取る。
中身はいろんな種類のケーキ。轟くん家は和菓子派かなと思ったから、敢えて逆のものにしてみた。

「ちゃんと挨拶するのよ!あと冬美ちゃんによろしく伝えといてね」
「はーい。いってきます」

母に見送られてアパートを後にする。
今日はあいにくの雨だ。傘を開き、濡れたアスファルトを歩いた。歩く度に地面が水音を立てる。

時折さあっと車が通り過ぎていく。住宅街故に車通りは少ない。
道の端を歩いていると前から誰かやってきたから、避けようとさらに端に寄った。

「綿世」
「わっ」

咄嗟に傘をやや後ろに傾けると、目の前に紺色の傘を差した轟くんがいた。

「びっくりした……轟くんだとは思わなかったよ」
「悪ィ。家まで迎えに行こうと思ったが、間に合わなかった」
「近いんだから迎えなんていいのに」

くすくす笑うと轟くんも頬を緩ませた。
短い道中、彼のお母さんのことを聞いた。元気そうだと聞いて安心した。

轟くんのお家は日本家屋だ。門をくぐり、彼に続いて玄関に上がった。

「お邪魔します」
「緊張してんのか?」
「んー、少し。轟くんち凄いね」

照れ笑いを浮かべて靴を揃えるとぱたぱたと足音がして、それから明るい声が響いた。

「いらっしゃい!って、え、女の子!?待って焦凍、聞いてない」
「言っただろ。友達が来るって」
「いや、男の子だとばかり……あっごめんね!どうぞ上がって」

冬美さんはずり落ちた眼鏡を押し上げて微笑んだ。
綺麗な人だなぁ、と思わず溜息を零した。

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