第10章 Infatuate
ふと、ハンバーガーは手や口を汚しながら食べる物だとテレビで誰かが言っていたのを思い出した。
アメリカの人も零しながら食べるのかなーなんて思いながら口を動かす。
学食のハンバーガー、今度頼んでみよう。
「綿世って世話焼かれるタイプかと思ってたけど、そうでもないんだな」
「相手が上鳴だからじゃね」
意外そうな切島くんに首を傾げると瀬呂くんがからかうように返した。確かに、何かと世話焼かれてるような気がするなぁ。
梅雨ちゃんにお茶子ちゃんに響香ちゃんに先生に……と思い起こされるエピソードに苦笑した。
上鳴くんは何となく母性擽るタイプだから自然と世話焼いてしまうのだと思う。
「デクと半分野郎もだろ」
こいつが世話焼くのは、と爆豪くんは吐き捨てるように言い放った。そして立ち上がるなり空の器の乗ったトレーを手に私達を残して去って行ってしまった。
いつもこんな感じなんだろうか?今日は私がいるから?
そのせいで居心地が悪いのだとしたら申し訳ないことしたな。
爆豪くんの後ろ姿にまた後でね、と声をかけた。
「そういや確かに緑谷のピンチには綿世がいるな!」
切島くんはぽん、と手を打って頷く。
「偶然だけどねぇ」
「轟は?世話焼いてる……か?わかんねぇ」
轟くんにはお世話になってばかりだ。私が世話を焼いてるというより、迷惑かけてるって感じがする。
爆豪くんは何を見てそう思ったのだろう。
私は曖昧に笑って、
「私もわかんないや」
と返した。
それから食事を終えた後も他愛のない会話を楽しんだ。
この日気づいたのは、男子に触れることに抵抗が薄らいできたってことだ。触れないようにと気を張らず過ごせたことにも、確かな手応えを感じていた。
後から振り返って我ながら凄いと思った。
轟くんのおかげだ。
私も何か返せるかな。何か役に立てることあるかな。
黒板に何か書き記すマイク先生。その背中をぼんやりと見つめた。
そうだ、期末テストが近いんだ。ぼーっとしてちゃダメだ。
慌てて頭を横に振って背筋を伸ばした。
落ち着いたらゆっくり考えよう。
紅白の髪を盗み見てから、ノートにシャーペンを走らせた。